世界指圧療法機構
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世界の指圧に関する会報・著書・論文集

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指圧師の『診・療』

池永 清 著

 指圧療法の創始者浪越徳冶郎先生(1905-2000)は、指圧の神髄は『診断即治療』にあると説いておられます。診断即治療とは、文字通り指圧療法における『手当』であり『診療』そのものを指します。この事は、日本国内において正しい指圧を後世に継承して行く上で、又は海外においても指圧の独自性をきちんと伝えて行く上で最も重要なポイントであると言えます。

 1957年発行の『指圧の理論と実技』のなかに、指圧の定義として『指圧とは、徒手で母指、手掌等を用い体表の一定部位を押圧して生体の変調を矯正し、健康の維持増進をはかり、または特定の疾病治癒に寄与する施術である』とあります。これは、指圧とは親指を中心に指と手掌のみで押圧する事、鍼や道具を使ったり肘や足で押したり、又は揉んだりこねたりしなことを明記しており、又、体表の一定部位とは定められた指圧点を指し、鍼灸の為のツボである経穴点とは違う、指圧の為の独自のツボ、即ち内臓体壁反射や皮膚分節あるいは関連痛などに基づき解剖生理学的観点により定められた指圧点を意味しております。

 従いまして、診断即治療の神髄を理解する為に重要な点はこの2点。ひとつは指と手掌のみで施術すること、ふたつ目は指圧独自のツボを理解すること。この2点を完全にものにしてこそ指圧独自の『診療』が発揮できるといえます。ところで、我々指圧師は指と手掌を使い正しく指圧点を押圧することを『基本指圧』と呼んでいます。ということは、突き詰めていけば指圧の神髄は基本指圧にあり、『基本=神髄』であるということになります。こう考えると、なるほど指圧学校時代にいやと言うほど叩き込まれた『基本を繰返し修練する事』の重要性の意味がわかってきます。

 それでは、具体的に指圧独自の『診療』とはどういう事でしょう? 西洋医学においても又は東洋医学(中国医療)においても、まず『診断』があって『治療』があります。つまり、診断と治療は別々の行為であり診断と治療の2つの行為を総称して診療と呼びます。又、通常治療の為には事前の診断が不可欠で診断がついてはじめて治療することが出来るということになります。ところが、指圧療法の場合は、『診断即治療』ですので、施術そのものが診断であり治療です。これは事前の診断が無くても治療が可能な事を意味し、原因不明で治療法なし、ということも普通は有り得ません。禁忌症で無い限りは診療出来ます。例え病名や症状などの原因がわからなくても、基本指圧を正しく行いさえすればそれが正しい診療となり、その結果からだの免疫力が高まって症状の緩和が可能です。

 ちなみに、手を使って診察することを、西洋医学においては『触診』と呼び、東洋医学(中国医療)にいては『切診』と呼びますが、これらは、それぞれの理論に基づいた診断専用の行為であり、指圧師の『診療』とは根本的にその目的も理論も異なるものです。又、カナダやアメリカでは、中国医療のツボである経穴点を鍼や灸に代わって母指や肘で刺激する事をアーキュプレッシャーと呼びますが、ここには、診断即治療という考え方は介在しません。

 『診断即治療』つまり指圧師の診療は、徹底した基本教育と、実際に多くの患者を施術することによってのみ得られる経験に裏づけされた、指圧師だけに与えられた究極の技なのです。


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