上体(第4胸椎から上)の各関節の指圧法 (特)日本指圧協会理事 師範 原田隆弘
1.昔あんま「上(かみ)・下(しも)」と云う言葉が良く使われて、その言葉通りの施術が行われていたと云われる。 我々指圧師の治療は全身指圧、局所指圧と云う言葉があり、昔の上・下に良く似ている。しかし我々の治療は原則として全身指圧と云うことになっている。 その方法は上(仰)臥、横臥、座位、立位などがあり、その状態によって臨機応変に施術することが肝要である。 即ち我々の指圧は相手方(患者)に治療を施し、自分の治癒能力を喚起させることが最大の目的であるため、おのずと全身治療が必要となってくる。 人間の体を上下に分けると上体と下体、左右に分けると右半身と左半身と云うことになる。左右の場合はほぼ同じ場所に同じ骨・筋肉・つぼが位置するが、上下の場合は流れが重要となってくる。 (1) 上半身とは臍を中心として上部、従って頭部、頚部、肩、腕、胸部、脊柱部(背部)、腰部、上腹部等である。 (2) 下半身は臍を中心に下側、下腹部、臀部、恥骨部、大腿部、下腿部、足などがそれである。
2.上半身の病について 上半身の病には本当に種々あるが、我々指圧師の治療の対象となるものを列挙して見ると @ 頭痛 A 頚部痛 B 肩こり、肩はり C 肩甲間部痛 D 胸部の痛み E のどの痛み F 背中の痛み G 上腹部の痛み H 肩、腕の痛み I 上腕、前腕、手の痛み と限りないがそれぞれに位置する内臓からの反射痛があることに注意すること。(下半身の病については省略)
3.上半身の病で特記する事は @ 頚部については、むち打ち症、捻挫、寝違い、頚部をとおる諸器官の反射痛 A 肩、腕については、五十肩(肩関節周囲炎)、石灰質の沈着症など B 肩甲間部については、ギックリ背中(激痛)など C 胸部については大胸筋から三角筋にかけての痛み、胸骨のゆがみ等 D 上腹部の痛み(胃痙攣)、内臓反射痛等 E 肩頚腕症候群、慢性疲労症候群等 A) この症状は上半身に関連することが大であるが、下半身にも関連することがあるので注意が必要である。 B) 症状としては後頚部、横頚部の痛み、肩から腕にかけての痛み、指先へのしびれなどが主たるもので、これを肩 頚腕症候群、これに似た症状で慢性疲労症候群と云う病名がある。これは全身に症状が出て特に脊柱を中心とし た背部に強い硬直(硬結)と痛みが出る。別名ストレス症候群とも呼ばれる現代病で、自律神経と疲労に非常に深く 関連する。 C) 原因は非常に複雑で、疲労(過労)頚椎の変形やずれ等によって筋肉や神経の圧迫により血流が悪く、リンパ液 の働き、神経の働きが正常でなくなる症状である。 D) 関連する部位は特に上体の各部位、頭部、頚部、肩、腕、脊柱の骨や筋に出ることが多いとされている。従って 我々指圧師にとって非常に重要で、且つ治療の対象となる病変であると思われる。
4.今回の講習会のメインテーマは各関節の指圧治療と云うことになっているので、上体の頚部(頚椎)と肩関節、肘関節、手根骨手首の関節、各指の関節のうち肩について述べ、頚部については実技の時説明したい。 1) 肩関節の病変の種類 @ 変形性肩関節炎または症 A 肩関節の拘縮 B 石灰質沈着症 C 頚腕症候群からくるもの D 軟骨の付着 などがある。 2) 肩関節に関連する骨 頚椎、上腕骨(特に骨頭)、肘関節、肩甲骨、鎖骨、胸骨、助骨等すべてに関連する。 3) 関連する筋肉 前述の骨の場合と同様、頭、頚、肩、腕、肩甲間部、胸部などの部位にすべて関連する、特に指圧師はこの部位の 筋肉、腱、靱帯が治療の対象となる。 4) これ等の筋肉を列挙すると 頭; 後耳介筋、上耳介筋、後頭筋、頭半棘筋、頭板条筋など 頚; 胸鎖乳突筋、僧帽筋、肩甲挙筋、頚半棘筋など 肩; 三角筋、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋、広背筋、上腕三頭筋、上腕筋など 胸部; 胸鎖乳突筋、広頚筋、大胸筋、上腕二頭筋、大円筋、烏口腕筋などがあり、これ等筋肉のほかに腱、靱帯 にも深く関連をしている。 5) 特に重点対象となる部位は頚部肩から上腕、肘関節、手首迄の筋肉腱靱帯、それに胸部の大胸筋、肩甲側の棘 上筋、棘下筋、脇の下(えっか部)が大切である。
5.肩関節周囲炎(又は症)によく効くつぼ症状別に説明すると 1) 帯が結べない場合; 腎兪、大腸兪、肩貞、天宗、ひじゅ、臑兪 2) 上と横にあがらない場合; 天柱、肩井、肩髃、ひじゅ、肩貞 3) 髪とかせない場合; 肩井、肩髃、ひじゅ、天宗、中府 4) 腕に痛みとしびれがある場合; 風池、天柱、完骨、天てい、缼盆、中府などで @ 親指側; 肩髃、曲池、手の三里、合谷 A 中指側; 曲池、曲沢、げき門、内関 B 小指側; 少海、神門 などを加えると良い成果をあげられる。
6.五十肩によく効くつぼの図解
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